サステナ転職の失敗と後悔 — ミスマッチを防ぐ5つの接続ポイント
- サステナ転職の失敗はミッション先行型・年収先行型・経験の盛りすぎ型という3パターンに整理できる。
- 面接前に業務解像度・経営の本気度・評価基準・チーム構成・経験の粒度という5つの接続ポイントを確認するとミスマッチを防ぎやすい。
- 厚生労働省の雇用動向調査によれば労働条件を理由とした離職は全体のおよそ1割弱で毎年推移している。
「想いは本物なんです、でも入ってみたら全然違いました」——半年前に転職したばかりの方から、こんな一言をいただいたことがあります。
結論から申し上げると、サステナ転職の失敗は「想いの強さ」の問題ではなく、「接続の甘さ」の問題だと僕は考えています。想いが強い人ほど、面接の場で熱量が先行し、事業の実態や自分のスキルとの接続を確認する工程を飛ばしてしまう。今日は、僕がこれまでの面談で繰り返し目にしてきた失敗パターンを3つに整理し、それぞれの防ぎ方と、失敗した後の立て直し方までをお伝えします。
0. サステナ転職の失敗は「想い」ではなく「接続」で起きる
サステナビリティ・環境領域の求人は、この数年で確実に増えています。ただ、僕の体感値で言うと、入社後1年以内に「こんなはずじゃなかった」と感じて再び転職相談にいらっしゃる方の割合は、他領域に比べてやや高いという印象があります。理由は単純で、この領域は「社会性」という抽象的な軸への共感が先に立ちやすく、業務の具体(誰と、何を、どの粒度で進めるのか)の確認が後回しになりがちだからです。
厚生労働省の「雇用動向調査」でも、転職者が離職を決めた理由として「労働条件が悪かった」という項目は、目安値としては全体のおよそ1割弱で毎年推移しています。サステナ領域だけの数字ではありませんが、この傾向は業界を問わず起きるミスマッチの構造そのものだと僕は捉えています。さらに体感値で言うと、後述するパターン1(ミッション先行型)は20代の方に、パターン2(年収先行型)は30代・40代の方にやや多く見られる傾向があります。想いの強さと、業務内容・待遇・組織文化との接続を、意識的に切り分けて確認する必要があるということです。
1. 失敗パターンその1:ミッション先行型のギャップ — 「掲げていること」と「やること」の距離
最も多く目にするのが、企業の掲げるビジョンやミッションへの共感を起点に転職を決め、入社後に「日々の業務」との距離に戸惑うケースです。以前、僕が面談を担当した30代の方は、大手メーカーから循環経済系のスタートアップに転職されました。面接では経営陣が語る「資源循環型社会の実現」という言葉に強く共感し、選考期間3週間ほどで即決に近い形で意思決定をされたそうです。ところが入社後の業務の大半は、取引先から回収した廃材の重量データを毎日スプレッドシートに入力し、CO2削減量を試算する地道な集計作業で、この業務だけで稼働時間の6割ほどを占めていたと振り返っていらっしゃいました。ビジョン自体に嘘はなかったのですが、そこに至るまでの実務の解像度を、面接時点で確認していなかったのです。
この種のギャップを防ぐには、面接の場で「入社後3ヶ月間、具体的に何をしますか」という質問を必ず投げることを僕はお勧めしています。抽象的なミッションへの共感を否定する必要はありません。ただ、共感と業務内容は別物として、両方を接続させて初めて意思決定の材料になるということです。ちなみにこの方は、その後上長に相談してデータ集計業務の一部を外部委託に切り替えてもらい、半年ほどかけて企画側の業務比重を増やしていきました。ギャップに気づいた時点で会社を離れるのではなく、まず社内で接続を作り直せないか試すという選択肢も、覚えておいていただきたいと思います。
2. 失敗パターンその2:年収先行型のミスマッチ — 上がった年収が、半年後に「割に合わない」に変わる理由
サステナ領域は専門人材の希少性から、前職より年収が上がるオファーが出やすい局面が増えていると僕は感じています。ただ、年収という単一の指標だけで意思決定をすると、後になって「割に合わない」と感じるケースが出てきます。ある40代の方は、ESGコンサルティングファームから事業会社のサステナビリティ推進部門へ、年収を1.5倍程度で転職されました。ところが実際に入社してみると、経営層のコミットメントが弱く、サステナ推進部門は「対外的な体裁を整えるための部署」という位置づけに近く、提案書を出しても実行段階に進むまでに数ヶ月単位で止まってしまう環境だったそうです。年収は上がったものの、専門性を発揮できる裁量がなく、半年ほどで「このままでは市場価値が下がる」と感じて再転職を検討されていました。
年収は結果であって目的ではありません。面接では「サステナビリティ推進の意思決定に、経営会議でどの程度の時間が割かれているか」を確認することをお勧めしています。この一問で、その会社が本気で取り組んでいるのか、体裁として置いているだけなのかが、かなりの精度で見えてきます。加えて、前職の年収と提示年収の差額だけでなく、その差額に見合うだけの裁量や役割の広がりが伴っているかを、オファー面談の場で率直に聞いてしまってよいと僕は思っています。金額の話を切り出しにくいと感じる方は多いのですが、入社後に感じる「割に合わなさ」の正体は、たいてい金額そのものではなく、金額と裁量の不釣り合いにあります。
3. 失敗パターンその3:経験の「盛りすぎ」が生む信頼崩壊 — 職務経歴書と面接での温度差
サステナ領域はまだ実務経験者の絶対数が少ないため、隣接領域の経験(環境法務、品質保証、広報のCSR担当など)を、実態以上に「サステナ推進の中核業務」として職務経歴書に書いてしまう方を時々お見かけします。ある方は、Scope3算定の実務経験を職務経歴書に大きく記載していましたが、実際には外部コンサルタントが作成した資料をレビューする立場に近く、算定ロジックを自ら組み立てた経験はありませんでした。入社後、算定手法の見直しを任された際にその差が露呈し、チーム内での信頼を取り戻すのに3ヶ月ほどかかったと振り返っていらっしゃいました。似たケースとして、広報部門でCSRレポートの制作を担当していた方が、面接で「サステナビリティ戦略の立案」という言葉を使ってしまい、入社後に戦略策定そのものを求められて苦労された例もあります。どちらも、経験そのものが不足していたわけではなく、経験の粒度を実態より一段階大きく見せてしまったことが原因でした。
経験を盛ること自体が悪いわけではありません。ただ、面接で深掘りされた際に、具体的な業務範囲・使ったツール・関わった期間まで即答できない経験は、書類に載せる際に「関与」「補助」といった言葉で正確に表現しておくことを僕はお勧めしています。信頼は入社後の数ヶ月で積み上げるものですが、崩れるのは一瞬です。
4. 面接前に確認しておきたい5つの接続ポイントと、その準備手順
ここまでの3パターンに共通するのは、「共感」「条件」「経験」のいずれかが単独で先行し、他の要素との接続を欠いていたという点です。以下は、僕が面談時に候補者の方へお伝えしている確認ポイントの一覧です。
| 確認軸 | 面接で聞くべきこと | 見えてくること |
|---|---|---|
| 業務の解像度 | 入社後3ヶ月の具体的な業務内容 | ミッションと実務の距離 |
| 経営の本気度 | 経営会議での議題としての扱われ方 | 裁量と実行力の有無 |
| 評価の基準 | 何をもって成果とされるか | 年収と業務負荷の整合性 |
| チーム構成 | 既存メンバーの経歴と人数 | 孤軍奮闘になるリスク |
| 自分の経験の粒度 | 職務経歴書の記載を深掘りされた際の即答可否 | 入社後の信頼構築のしやすさ |
この5つは、いずれも「聞けば答えが返ってくる」種類の質問です。実務的な準備としては、面接前日までに5つの質問を紙一枚に書き出す作業に15分、それぞれの質問に対して「どう答えられたら合格ラインか」を自分の中で決めておく作業に15分、あわせて30分程度を目安に確保していただくと、面接当日に熱意のアピールだけで時間を使い切ってしまう事態を避けられます。逆質問の時間を、共感を伝える時間だけでなく、接続を確認する時間として使っていただきたいと僕は考えています。
5. 失敗しても取り返せる人と、取り返せない人の分かれ目
ここまで失敗パターンを紹介してきましたが、僕がお伝えしたいのはミスマッチが起きること自体を過度に恐れないでほしいということです。実際、ミスマッチを経験した方の多くは、次の転職でより解像度の高い意思決定ができるようになっています。分かれ目になるのは、ミスマッチの原因を「会社が悪かった」で終わらせず、「自分がどの確認を怠ったのか」まで言語化できているかどうかです。
先ほどのScope3算定のケースの方は、次の転職活動で「算定ロジックをゼロから設計した経験があるか」を自分自身の職務経歴書でも面接でも正確に区別して語るようになり、結果として算定実務を任せてもらえるポジションへの転職を実現されました。逆に、取り返せなかった方に共通していたのは、転職活動を急ぎすぎて振り返りの時間を取らなかったケースです。失敗を、次の接続確認の材料に変えられるかどうかが、この領域でのキャリアの伸びしろを左右すると僕は考えています。
(結論)
皆さんいかがでしたでしょうか。サステナ転職の失敗は、想いの強さや能力の不足で起きるのではなく、共感・条件・経験のどこかで接続の確認が甘くなることで起きます。面接の場を、熱意を伝える時間だけでなく、5つの接続ポイントを確認する時間として使っていただければ、ミスマッチの確率は着実に下げられるはずです。皆さんも一つずつ、丁寧に接続を確認しながら、では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. サステナ転職でよくある失敗にはどんなものがありますか?
最も多いのはミッション先行型・年収先行型・経験の盛りすぎ型の3パターンです。ミッションへの共感、年収の高さ、経験の見せ方のいずれかが単独で先行し、業務内容や経営の本気度、自身のスキルとの接続確認が不足することで、入社後に想定とのズレが生まれます。面接の場で具体的な業務内容や意思決定の実態を確認することが、この3つのミスマッチを防ぐ最も有効な方法だと僕は考えています。
Q. 面接でミスマッチを防ぐために何を質問すればよいですか?
業務の解像度・経営の本気度・評価基準・チーム構成・経験の粒度という5つの接続ポイントを確認する質問が有効です。具体的には「入社後3ヶ月の業務内容」「経営会議での扱われ方」「成果の評価基準」「既存メンバーの経歴」「自分の経験を深掘りされた際の説明」の5点で、これらを逆質問として使うことで、共感や条件だけで意思決定するリスクを下げられます。
Q. 転職に失敗したと感じた場合、どう立て直せばよいですか?
失敗の原因を会社側だけに求めず、自分がどの接続確認を怠ったのかを言語化することが立て直しの第一歩です。実際に、経験の粒度を正確に語れなかった方は、次の転職活動で業務範囲を具体的に説明できるようにした結果、より解像度の高いポジションへの転職を実現しています。ミスマッチの経験は、次の意思決定の精度を上げる材料として活用できると僕は考えています。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。