サステナ担当者のキャリアパス — 入社後3年で何が変わるのか
- サステナ担当者の成長は0〜6か月・1〜2年目・2〜3年目の3段階で役割が変わる傾向が、僕の観測ではあります。
- 2〜3年目でマネジメント志向と専門職志向の分岐が起きやすく、会社の組織成熟度が分岐先を左右します。
- 今日からできる実務アクションは、社内の利害関係者リストの作成と、外部勉強会への月1回参加の2つが目安です。
「入社して1年は言われたことをやるだけでした。2年目でようやく自分の企画が通るようになって、3年目で急に管理職の話が来て——正直、心の準備が全然できていませんでした。」
これは僕がキャリア相談の中で伺った、ある方の言葉です。名前も会社も伏せますが、似た構造の話をサステナ・GX・ESG領域では何度も聞いてきました。個人的には、この領域のキャリアパスにはある程度共通した段階があると考えています。今日は、配属直後から3年目の分岐点まで、僕の観測に基づく独自ガイドの目安値として整理してみます。結論を先に言うと、キャリアパスは「土台づくり(0〜6か月)」「領域拡大(1年目後半〜2年目)」「分岐(2〜3年目)」という3段階で進みやすく、分岐の先が管理職か専門職かは、本人の志向と同じくらい会社側の組織成熟度に左右される、というのが僕の見立てです。
1. サステナ担当者のキャリアパスの全体像 — 3年間で何が起きるか
サステナ・GX・ESG領域の中途採用は、多くの場合「専任担当が1〜3名しかいない」状態からスタートします。これは他の職種と比べて特殊な点で、例えば営業やエンジニアであれば既にチームと評価制度が整っている中に入るのに対し、サステナ担当は評価制度そのものを自分たちで作りながら仕事をすることになりやすいです。この違いが、キャリアパスの見え方にも影響していると僕は考えています。
下の表は、僕がこれまでお話を伺ってきた方々の経験を基にした、独自ガイドの目安値としての3年間の変化です。公的な統計としてこの領域のキャリア段階を体系的に示したものは現時点では見当たらないため、あくまで体感値としてご覧ください。
| 期間 | 主な仕事内容 | 求められる力 | 陥りやすい罠 |
|---|---|---|---|
| 0〜6か月 | 現状把握・社内ヒアリング・既存資料の棚卸し | 傾聴力・社内関係構築 | 成果を焦って空回りする |
| 1年目後半〜2年目 | 他部署を巻き込む企画・小規模プロジェクト運用 | 交渉力・データ整理力 | 担当範囲が広がりすぎて浅くなる |
| 2〜3年目 | 方針決定への参画・後任育成 or 専門分野の深掘り | 意思決定力 or 専門知識 | 分岐を意識せず流れに任せる |
この表を見て「うちはもっと早い」「うちはもっと遅い」と感じる方もいると思います。それで問題ありません。会社の規模、専任チームができた時期、経営層のコミットメントの強さによって、この時間軸は前後します。あくまで目安として、自分がどの段階にいるかを確認する道具として使っていただければと思います。
2. 配属直後(0〜6か月):土台づくりの時期と、つまずきやすい点
配属直後の半年間は、多くの方にとって「思っていた仕事とギャップがある」時期です。転職前は「脱炭素の戦略を描く仕事」を想像していたのに、実際には既存資料の整理や、各部署へのヒアリング、社内用語の理解に多くの時間を使う、というのはよくある話です。冒頭で紹介した方も、まさにこの半年間について「言われたことをやるだけだった」と振り返っていました。
ここで僕が個人的にお伝えしたいのは、この時期に成果を急ぐ必要はない、ということです。サステナ領域は経営・製造・調達・広報・人事など、ほぼ全部署が関係者になり得る珍しい職種です。誰が何を決められるのか、誰の協力があれば物事が進むのかという「社内の地図」を持っていないまま企画を出すと、途中で頓挫しやすくなります。実際、僕が伺った失敗談の多くは「早く成果を出そうとして、決裁者を通さずに動いてしまった」というパターンでした。逆にうまくいっている方は、最初の3か月をほぼヒアリングと関係構築に使い、4か月目以降に初めて小さな提案を出す、という順番を踏んでいる印象があります。
比喩で言うと、この半年は家を建てる前の地盤調査のようなものだと僕は考えています。地盤が緩い場所にどれだけ立派な設計図を描いても、後で傾いてしまいます。焦って「柱を立てる」前に、まず足元を固める時期だと捉えておくと、心の余裕が生まれやすいと思います。
3. 1年目後半〜2年目:担当領域が広がり、社内交渉力が問われる時期
土台ができてくると、多くの方は担当領域が自然と広がっていきます。最初はサプライチェーンの一部だけを見ていたのに、気づけばグループ会社全体の集計を任されている、というのはよくある展開です。これは会社側からの信頼が増している証拠でもあり、悪い話ではありません。ただ、この時期特有の難しさもあります。
一つは、担当範囲が広がるスピードに対して、権限や人員が追いついてこないというギャップです。僕の体感値で言うと、この時期に「仕事は増えたが評価制度や人員配置はまだ1年目のまま」という声を伺うことが少なくありません。もう一つは、他部署との交渉が本格的に始まる時期でもあるという点です。脱炭素データの提出を各部署に依頼したり、ESG開示のために現場の協力を得たりする場面で、社内の力関係や過去の経緯を理解していないと、単なる「お願いする側」で終わってしまいます。
この時期を乗り越えている方に共通しているのは、社内の利害関係者を「協力者」に変える動きを意識的にしていることです。データを出してもらうだけでなく、その部署にとってのメリット(例えば工数削減や、対外的な評価材料になること)をセットで提示している、という声を何度か伺いました。個人的には、この「相手のメリットを添える」姿勢が、1年目後半から2年目にかけての最大の分かれ目だと考えています。
4. 2〜3年目の分岐点 — マネジメント志向か、専門性の深掘りか
2〜3年目に入ると、多くの方が一度キャリアの分岐に向き合うことになります。冒頭の方が「急に管理職の話が来た」と話していたのも、まさにこの時期の出来事でした。分岐の先は大きく二つに分かれると僕は見ています。一つは、チームを持ち後任を育てる「マネジメント志向」。もう一つは、特定分野(LCA、ESGレポーティング、GXの制度対応など)を深める「専門職志向」です。
| 観点 | マネジメント志向 | 専門職志向 |
|---|---|---|
| 求められる力 | 意思決定・育成・部署間調整 | 分野固有の知識・実務精度 |
| 市場での見られ方 | 「サステナ部門の立ち上げ経験者」として評価 | 「特定分野の実務に強い人」として評価 |
| 向きやすい会社 | 専任チームが拡大中の会社 | 専門分化が進んだ大企業や監査法人系 |
ここで大事なのは、この分岐は本人の希望だけで決まるわけではないということです。個人的には、会社側の組織成熟度が半分くらいの比重を占めていると考えています。専任チームがまだ数名で拡大中の会社であれば、意欲があれば早い段階でマネジメント側に進みやすいです。一方、既に専門分化が進んでいる大企業では、専門職としての実績を積む方が評価されやすい、という傾向があります。
よくある失敗として、会社の状況を見ずに「自分はマネジメントに進みたい」と一方的に主張してしまい、社内での期待とずれてしまうケースがあります。逆に、専門性を深めたいのに会社側からはマネジメントを期待されていて、すり合わせがうまくいかないという逆のパターンもあります。どちらが良い悪いではなく、この時期に一度、上司や経営層と「自分はどちらに進みたいか」を言葉にして共有しておくことが、後々のミスマッチを防ぐと僕は考えています。
5. 分岐を決める3つの要因
分岐の方向を考えるとき、僕は3つの軸に分けて考えることをおすすめしています。一つ目は会社の組織成熟度、つまり専任チームがいつ立ち上がり、今どのくらいの規模かという軸です。二つ目は本人の資質、特に「人を動かすことに喜びを感じるか」「一つのことを深く突き詰めることに喜びを感じるか」という人間力に近い軸です。三つ目は市場評価の軸で、これは職種経験や技術スキルに近い話になります。ESGやGXの領域では、特定の開示基準や算定手法に詳しい人材の市場価値が上がっている、というのが僕の体感値です。
この3つの軸を混ぜて考えると、判断がぶれやすくなります。例えば「自分はマネジメントに向いていると思うが、市場では専門職の方が評価されそうだから専門職を選ぶ」という判断は、資質の軸と市場評価の軸を混同してしまっている例です。個人的には、まず資質の軸で「どちらが自分にとって楽しいか」を決め、そのうえで会社の組織成熟度と市場評価を、進み方のスピード調整に使う、という順番がおすすめです。
6. 今日からできる実務アクション
ここまでは段階の整理でしたが、実際に今日から動けることも2つほどお伝えしておきます。一つ目は、社内の利害関係者リストを作ることです。関係する部署名、その部署のキーパーソン、その部署が今何に困っているかを、簡単な表でまとめておくだけで、次の企画を通すスピードが変わってきます。特に配属直後の方には、これを最初の1か月の宿題として持っておくことをおすすめしています。
二つ目は、月1回程度、外部の勉強会やセミナーに参加することです。社内にいるだけでは、自分の担当範囲がこの領域全体の中でどの位置にあるのかが見えにくくなります。外部の場に出ることで、他社の担当者がどんな課題を持っているか、市場でどんなスキルが評価されているかの感覚を持ち続けることができます。個人的には、この「外の風を入れる」動きを継続している方ほど、2〜3年目の分岐点で自分の意思を持って選択できている印象があります。
加えて、半年に一度は上司との1on1で「自分は今どちらの方向に進みたいか」を言葉にして共有しておくことも、遠回りに見えて実は近道になると僕は考えています。分岐は突然やってくるように見えますが、実際は半年前、1年前からの積み重ねの結果であることが多いです。
0. 結論
まとめると、サステナ・GX・ESG担当者のキャリアパスは、0〜6か月の土台づくり、1年目後半〜2年目の領域拡大、2〜3年目の分岐という3段階で進みやすいというのが、僕の観測に基づく独自ガイドの目安値です。分岐の先はマネジメント志向か専門職志向に大きく分かれ、その方向は本人の資質だけでなく、会社の組織成熟度や市場評価との掛け合わせで決まっていきます。今日からできることとしては、社内の利害関係者リストの作成と、月1回の外部勉強会への参加、そして半年に一度の上司との対話をおすすめしました。皆さんいかがでしたでしょうか。今の自分がどの段階にいるのか、一度立ち止まって整理してみると、次に何をすべきかが見えてくると思います。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. サステナ担当者は入社何年目で管理職の話が出ますか
僕がこれまで伺ってきた範囲での目安値ですが、2〜3年目で管理職の打診が出るケースが多いです。ただしこれは組織の成熟度によって大きく前後し、専任チームが立ち上がって間もない会社では1年目でも打診が来ることがあります。逆に大企業で既に部署が整っている場合は、3年目以降まで様子を見られることもあります。年数そのものより、担当領域の広がり方を見た方が実態に近いと考えています。
Q. サステナ担当は専門職としてずっとやっていけますか
個人的には、専門性を深める道は十分に成立すると考えています。ESGレポーティングやLCA、GXの制度対応など、領域が細分化してきているため、特定分野に強い専門職としての市場価値は上がりやすい傾向があります。ただし専門職として評価されるには、社内での成果を外部にも説明できる形(登壇・執筆・資格等)で可視化する動きが必要になる場合が多いです。
Q. 配属直後に何をすれば1年目でつまずきにくいですか
結論から言うと、最初の3か月は成果より関係構築を優先した方がつまずきにくいというのが僕の体感値です。サステナ領域は社内のほぼ全部署が関係者になるため、誰が何を決められるかを早期に把握できているかどうかが、その後の企画の通りやすさに直結します。焦って施策を打つより、まず社内地図を描くことをおすすめしています。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。