サステナ領域の面接で見られること — 熱意の先にある3つの問い
「環境問題を、仕事にしたいんです」
サステナ領域を目指す方の面談で、僕がいちばん多く聞く言葉です。志が高く、まっすぐで、素敵だと思います。でも皆さま、ひとつだけ先にお伝えしておきたいことがあります。その熱意は、面接では加点にも減点にもなりません。正確に言えば、熱意は「入場料」であって「勝ち筋」ではない、ということです。サステナの仕事に応募してくる人は、ほぼ全員が熱を持っています。だから熱意は差になりません。差がつくのは、熱意の一段先にある、もっと地味な三つの問いです。
僕は採用側と応募側の両方から、この領域の面接を見てきました。そこで見えたのは、ESGやGX(グリーントランスフォーメーション)関連ポジションの面接官が本当に確かめたいことは、突き詰めると三つしかないということです。「この人は、実務を回せるか。数字で語れるか。社内を動かせるか」。実装・計測・推進。僕はこれを面談で「サステナ三点測量」と呼んでいます。今回は頻出質問をこの三点に仕分けして、答え方の型まで書きます。
0. 前提 — なぜ「熱意」が効かなくなったのか
まず、時代の背景を一つ。金融庁の要請を受け、有価証券報告書でのサステナビリティ情報の記載が制度化され、2023年3月期以降、上場企業には気候関連を含む開示が広く求められるようになりました。プライム市場ではTCFD(気候関連財務情報開示)またはそれと同等の枠組みに沿った開示が実質的な標準になっています。何が言いたいか。サステナはもう「理念を語る部署」ではなく「決算に載る数字を作る部署」になったということです。だから面接官は、詩を朗読できる人ではなく、締切までに開示に耐える数字を揃えられる人を探しています。熱意が効かなくなったのは、この一点に尽きます。
1. 第一の問い 実装 — 「回せる人か」を測る質問
実装の不安は、こんな質問に化けて出てきます。「これまでで、いちばん地味だった仕事を教えてください」「関係部署が10も20もある中で、データを集めきった経験はありますか」「Scope3の算定、どこから手をつけますか」。
ここで急所になるのが最初の質問です。「地味な仕事」を聞くのは意地悪ではありません。サステナ推進の実務は、その9割が他部署への催促と、Excelの突き合わせと、定義のすり合わせだからです。温室効果ガスの算定範囲はScope1(自社の直接排出)、Scope2(購入した電力等)、Scope3(サプライチェーン全体)に分かれますが、実務家がいちばん時間を溶かすのはScope3で、その裾野は購買・物流・出張まで及びます。だから「華やかな戦略立案がやりたいです」と目を輝かせる人ほど、面接官は不安になる。模範解の構造はこうです。「まず現状のデータの所在を洗い出します。前職では、バラバラだった◯◯の数字を、部署ごとの担当を決めて四半期で回る仕組みにしました」。戦略の前に、まず泥をかぶれる人か。これが実装の問いの本体です。
もう一つ。この領域は制度も基準も毎年変わります。「知らないことが出てきたら、どうしますか」と聞かれたら、「勉強します」で止めないでください。「一次情報(省庁の告示やGHGプロトコル本文)に当たり、分からなければ算定支援の外部専門家や監査法人に確認します」——誰に聞けば正解にたどり着けるかを知っていると示せる人が、実務家として信用されます。
2. 第二の問い 計測 — 「数字で語れる人か」を測る質問
計測の不安は、こう聞かれます。「あなたの前職での取り組みは、どんな数字で成果を説明できますか」「そのCO2削減、根拠は何ですか」「その数字、第三者に説明できますか」。
ここで見られているのは、環境への愛の深さではありません。主観を数字に翻訳できるかです。「環境に良いことをしました」は、この領域では褒め言葉になりません。開示は監査と投資家の目に晒されるので、根拠のない数字は事故になるからです。だから面接では、成果を必ず単位付きで語ってください。「削減しました」ではなく「基準年比で◯%、t-CO2で言うと年間◯トン削減しました。算定はGHGプロトコル準拠、範囲はScope1・2です」。範囲と基準年と単位。この三点セットで話せる人は、それだけで計測の不安をほぼ消せます。
逆に、CO2やSDGsやカーボンニュートラルという言葉をどれだけ並べても、自分の仕事を一つも数字で語れない応募者は、意識は高いが実務は浅い人に見えます。サステナの面接では、美しいビジョンより、単位のついた小さな実績のほうが信用になります。これは他業界の面接とかなり違う点なので、強調しておきます。
3. 第三の問い 推進 — 「社内を動かせる人か」を測る質問
三つ目の不安は、こんな質問群です。「反対する事業部門を、どう説得しましたか」「経営会議に上げる資料を作った経験はありますか」「現場から『コストが増えるだけだ』と言われたら、何と返しますか」。一見バラバラですが、全部「巻き込めるか」を測っています。
なぜここまで推進力を問うのか。サステナ推進室は、たいてい人数が少なく、予算も権限も大きくない部署だからです。自分の手で工場の設備は変えられない。動かすのは常に他部署で、しかもその他部署は短期の利益目標を背負っている。だから「正しいことを言えば人は動く」と思っている人は、この領域で必ず折れます。模範解の構造は「正論→翻訳→握り」です。「削減が正しい、で押すのではなく、それが調達リスクの低減や取引先からの要請対応になると、相手の言葉に翻訳して合意を作りました」。事実として、取引先から自社のCO2データ提出を求められる場面は、大企業を起点に中堅・中小へと広がっています。環境の話を、相手の損得の話に翻訳できる人が、推進の問いの勝者です。
転職理由をここで聞かれることもあります。原則はシンプルで、前職の「本気度が足りない」を悪口で終わらせないこと。「前の会社はサステナに本気じゃなくて」と言い捨てれば、「うちでも理想と現実のギャップで辞める人」に見えます。「◯◯まではやり切った。次は開示から実装まで一気通貫で関わりたい」——不満を、次の挑戦に翻訳して着地させてください。
4. 逆質問 — 最後の5分で三点測量を示す
「何か質問はありますか」。この5分を「特にありません」で捨てるのは、本当にもったいない。逆質問は、あなたが三点測量を理解している人間だと示す最後のチャンスです。
使える逆質問を挙げます。「サステナ推進部門の予算と権限は、どの範囲まで持っていますか」(推進の現実を分かっている)。「開示は今、内製と外部委託のどちらが中心ですか」(実装の解像度が高い)。「削減目標の算定範囲は、Scope3までカバーする計画ですか」(計測の言葉で話せる)。逆に、初回面接で在宅比率や残業だけを重ねると、条件でしか会社を見ていない印象になります。条件確認は、内定前後の交渉フェーズに回すのが得策です。
5. 面接前日の準備 — 3行だけ用意する
準備の話をします。想定問答を30問作る必要はありません。前日に用意するのは3行だけです。実装の行:泥くさく数字を集めきった実例をひとつ。計測の行:範囲・基準年・単位つきで語れる成果をひとつ。推進の行:反対を翻訳で乗り越えた実例をひとつ。この3行が口をついて出るなら、どんな変化球が来ても、どれかの行に接続して答えられます。質問は無限でも、問いは三つしかないからです。
6. NG回答集 — 良かれと思って落ちる5つの答え
逆側からの点検です。本人は良い答えのつもりで、面接官の不安を膨らませる「善意のNG回答」を5つ。
①「地球のために働きたいんです」で止まる——入場料を大声で読み上げているだけに聞こえます。志の先に、回せる実務を一つ添えてください。②「何でも吸収します」——意欲のつもりが「自分の武器を持っていない人」に聞こえます。「◯◯を軸に、算定にも広げたい」と軸を先に。③成果を全部『貢献しました』で語る——単位のない成果は、この領域では成果として数えられません。④「正しいことなので、やるべきです」を連発する——推進の章で書いた「正論で押す人」の警報が鳴ります。相手の損得に翻訳して語る。⑤「特に質問はありません」——最後の5分を捨てる答え。逆質問は準備しない理由がありません。
共通点にお気づきでしょうか。5つとも、熱意はあるのに、三点測量のどこにも接地していない答えです。面接は志の深さを競う場ではなく、向かいに座る人の三つの不安を、事実で静かに消していく場。この認識を持てば、あなたの面接は今日から変わります。
(結論)面接は宣誓ではなく、三点測量
まとめます。①サステナ面接の質問は「実装・計測・推進」の三つに還元できる。②実装は「戦略の前に泥をかぶれるか」で。③計測は「範囲・基準年・単位」の三点セットで。④推進は「正論を相手の損得に翻訳できるか」で。⑤逆質問で三点の理解を示し、⑥準備は3行でいい。
熱く語る必要はありません。向かいに座る人の三つの不安を知っていて、それを事実で消してあげられる人が、サステナ面接の勝者です。熱意は、その土台の上でこそ光ります。
皆さんいかがでしたでしょうか。面接の前に、まず自分の現在地の棚卸しから。15問の適性診断をどうぞ。では今日もがんばりましょう。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。